東京シティビューで火の鳥と出会う『手塚治虫「火の鳥」展』開催中! 六本木ヒルズで体感する生命の物語
東京都
“漫画の神様”手塚治虫先生が生涯をかけて描き続けた「火の鳥」。自らのライフワークと宣言したとされる同作は、伝説の鳥の血を飲めば永遠の命を得られる……そんな言い伝えを巡る人間の葛藤を描いた壮大な叙事詩だ。その展覧会、『手塚治虫「火の鳥」展 一火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴一』が六本木ヒルズの東京シティビューで2025年5月25日(日)まで開催されている。

連載開始から70年あまり。今なお色褪せることのないこの名作を、生物学者・福岡伸一さんが新たな視点で読み解いていく。原画を中心に、映像、関連資料、「火の鳥」の世界を表現したグラフィックなど、約800点を一挙公開。手塚先生が生涯をかけて問い続けた「生命とは何か」。その答えを本展で探っている。
会場はプロローグを皮切りに、3つの章で構成。漫画の原画、映像、資料、グラフィックがずらりと並ぶ。繊細な筆致、緻密なコマ割り、息をのむほどの画力。まるで手塚先生の創作の現場に立ち会っているかのような空間が広がる。
ただ見るだけでは終わらない。「読んで」「感じて」「体感する」。そんな特別な体験が待っている。「火の鳥」の世界に飛び込み、生命の壮大な流れを感じてほしい。
原画に圧倒、火の鳥に魅了!ゲストたちが語る“生命の物語”

開幕を前に、会場ではオープニングセレモニーが開催された。登壇したのは「火の鳥」を愛してやまないマンガ家・矢部太郎さん、手塚先生の娘であり、手塚プロダクションの手塚るみ子さん、そして本展の企画監修を務めた生物学者の福岡伸一さん。さらに、バレエ「火の鳥」で主役を務める新国立劇場バレエ団プリンシパル・小野絢子さんも駆けつけ、華やかな幕開けとなった。


ゲストたちは、「火の鳥」展のキービジュアルを象徴する黒と赤を基調とした衣装で登場。福岡さんは「ようやくこの日を迎えられてうれしいです。『火の鳥』に通じるメッセージが、私の考える“動的平衡論”と重なるところがあり、現代的な視点から作品を読むことに意義があると感じています」と語る。るみ子さんは「70周年というアニバーサリーに合わせて開催ができました。もう一度作品のメッセージが何だったのかをこの場所で確かめてほしいです」と期待を込めた。

展示を一足先に鑑賞した矢部さんは、会場に並ぶ原画の数々に圧倒されたという。「たくさん原画があって感動しました。じっくり見たいので、またすぐに来ると思います。原画からすごいパワーを感じて、手塚先生が火の鳥では?と思うほどでした!」と興奮が止まらない。さらに、「手塚先生のようなマンガを描きたくて、マンガ家を始めました。線の美しさや実験的なコマ割りなどを原画で見て、同じマンガ家でも僕には思いつかないなと感じました…」と、プロの視点からもそのすごさを語っていた。

小野さんは、バレエ「火の鳥」で実際に使用される赤い羽を手に登場。特別な演出の舞を披露し、本展の成功を祈願。その瞬間、6基のモニターにコンセプトムービーが映し出され、幻想的な空間が広がった。

最後に、それぞれが「火の鳥」への想いを語る。福岡さんは「『火の鳥』は、大過去から大未来までの非常に壮大な物語です。大人はもちろん、私が10歳のときに『鳳凰編』に出会ったように、子どもたちにも『火の鳥』を楽しんでもらいたいです」とコメント。るみ子さんは「『火の鳥』は、読む世代ごとに、感想が変わる作品。400点近い肉筆の原稿の中からも、何が描きたかったのかを感じられると思います。完結できなかった物語についての考察も、自分の人生と照らし合わせて楽しんでほしいです」とメッセージを送った。


矢部さんは、「マンガ家として、筆を置いてしまいたくなるくらい、原画のすばらしさに打ちのめされました。僕自身、中学の頃に『火の鳥』を読んで、作品の壮大さに自分の悩みがどうでもよくなったことがあります。ぜひ、皆様に見ていただきたいです」。そう語る眼差しは、今もなお「火の鳥」に魅了され続けるひとりの読者そのものだった。
【プロローグ 火の鳥・輪廻シアター】圧巻の映像体験!火の鳥が織りなす時空のシンフォニー

エントランスを入って最初の空間は、東京のパノラマビューが広がる展望台に広がる輪廻シアター。
その空間全体を使い、「火の鳥」の壮大な世界がダイナミックに展開する。シアターの中央には、時空を超え、姿を変えながら生き続ける「火の鳥」を、新たな解釈で映像によって表現。その存在は、絶えず変化しながらも調和を保つ「生命の流れ」と重なる。さらに、左右に配置された6基のモニターには、「黎明編」から「太陽編」まで、12の主要エピソードの名シーンが映し出される。これらを手がけたのは、デザイナー・中村勇吾さん。ランダムに現れる映像が、時を超える物語のダイナミズムを生み出し、圧巻の空間が演出されている。
そして足元には、「火の鳥」のコマがびっしりと敷き詰められる。「コマの上に立つなんて恐れ多い…!」と矢部さんが興奮するほどの迫力だ。まるで作品の中に入り込んだかのよう。見上げ、見渡し、足元を見つめる。視界のすべてが「火の鳥」の世界。その場に立つだけで、物語の一部になれる。
【第1章 生命のセンス・オブ・ワンダー】虫の世界に宿る創作の原点。手塚治虫が描いた生命の軌跡

第1章では、創作の出発点に迫り、作品に込められた「生命とは何か」という問いに触れる展示で紹介。
「火の鳥」が生まれたのは1954年(昭和29年)。学童社「漫画少年」で「黎明編」の連載がスタートし、壮大な物語が幕を開けた。作品の時間軸は、紀元前から西暦3000年を超える未来まで。過去と未来を行き来しながら描かれる、壮大で複雑なストーリー。その流れを、時代背景とともに年表形式でわかりやすく紹介。物語の全貌を、一目で理解できる。
そして、「火の鳥」の根底にある「生命の流れ」。その原点は、幼い頃の手塚先生が夢中になった「虫の世界」にあった。蝶がさなぎから羽化する姿に驚き、その色や模様の美しさに心を奪われた。小さな生き物の不思議な営みを目にし、自然への尊敬と感動を抱く。この“センス・オブ・ワンダー”こそが、後の創作の原点に。「火の鳥」に登場する、絶えず変化しながら生き続ける生命のモチーフは、まさにそこから生まれた。
手塚先生は、どのように「火の鳥」を構想し、形にしていったのか。物語の誕生と、その背景を知ることで、「火の鳥」の新たな魅力が見えてくる。
【第2章 読む!永遠の生命の物語】直筆原稿とともに巡る、壮大な「火の鳥」の世界

いよいよメインパートへ。第2章では、手塚先生のライフワーク「火の鳥」を、「黎明編」から「太陽編」まで、直筆原稿とともに紹介する。
光と輝きをまとった不死鳥「火の鳥」。その生き血を飲めば、不老不死になれる……そう信じ、生に執着する人間たち。その欲望を見透かし、翻弄しながらも、歴史の流れを見守る存在。火の鳥は一体、何を象徴しているのか。「生命とは何か」という大きな問いに対し、手塚先生が示した答えとは。物語が進むごとに、その意味が徐々に明らかになっていく。

展示では、主要12編を各編ごとに、原画とともに人物相関図やあらすじを通して、物語の全体像をひも解く。さらに、生物学者・福岡さんが『福岡伸一の深読み!「〇〇編」』として、それぞれのエピソードに込められた生命観を解説。手塚先生が「火の鳥」に込めた想い。その本質に迫る。
【第3章 未完を読み解く】福岡伸一が読み解く“最後の一コマ”。そこに隠された答えとは?

「死とはいったいなんだろう?そして生命とは?この単純でしかも重大な問題は、人類が有史以来取り組んで、いまだに解決していないのだ」。「火の鳥」の黎明編が連載を開始したとき、手塚先生はこう語った。
生前、角川春樹さんとの対談で「死ぬときに書いてみせる」と語っていた結末。しかし、「火の鳥」は未完のまま幕を閉じた。手塚先生は、どのように物語を完結させるつもりだったのか。永遠の生命は、本当に幸せなのか。
「最後に想定された一コマこそが、物語全体の円環構造を完成させ、手塚先生の死生観を完結する絵になったはず」と推理する福岡さん。作品の中に散りばめられた無数のヒントをもとに、ひとつの仮説を提示する。未完の物語に、もし手塚治虫さんの手が加わっていたら……。その可能性がここで探られる。
展示を堪能したあとは、ミュージアムショップへ!

火の鳥がデザインされた公式グッズやキーホルダーなど、ここでしか手に入らないプレミアムなアイテムがそろう。お土産に、記念に、その世界観をそばに置いて楽しもう。



「火の鳥」をまだ読んだことがない人も、長年のファンも、手塚先生の作品の奥深さに触れ、新たな発見ができる特別な展覧会。六本木ヒルズ52階の東京シティビューでは、展示とともに東京の絶景も楽しめる。空と一体になったような空間で、「火の鳥」の世界に浸るひとときを過ごそう。物語の魅力をじっくり感じ、手塚先生の「生命とは何か」という問いに思いを巡らせてみよう。
取材・文・撮影=北村康行
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(c)Tezuka Productions
※手塚治虫の「塚」は旧字体が正式表記です。
この記事で紹介されたイベント・スポット
詳細情報
■手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-会期:2025年3月7日~5月25日(日)
会場:東京シティビュー(東京都港区六本木 6-10-1六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:10:00~22:00(最終入館21:00)
入館料:<平日>一般2300円、高校・大学生1700円、4歳~中学生 800円、65歳以上2000円、<土・日・休日>一般 2500円、高校・大学生 1800円、4歳~中学生900円、65歳以上2200円
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